ミツバチ問題

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我が家の周辺地区で、今年の春はポリネーションが中止されることになった。ポリネーションというのは、ミツバチを使った花の授粉のこと。去年の開花期におきた「大量死」の原因が農薬散布だった、として養蜂業者が巣箱設置を拒否した。

ポリネーションがまったく行われないという事態は、初めてのことだろう。どの程度、その影響が出るか、見当がつかない。各農家が自前で飼っているマメコバチが、ミツバチが抜けた穴をどのくらい埋めて働いてくれるかにかかっている。もちろん野生のミツバチやクマバチも多少の役割は果たすだろう。

去年の事故についてはこのブログにも書いた。
「ミツバチの大量死」が流行っている(2009年5月16日)

けっきょく去年の場合、原因の農薬分析は行えなかったので、状況証拠だけで判断されることになった。該当する期間(4月下旬)にあった農薬散布の中身が問題にされた。

しかし、農家から聴取された防除暦のかぎりでは、その期間に使われた農薬にはハチを殺してしまうようなものがひとつも入っていなかったようだ。ある農家が殺虫剤を使ったが、それは従来、ハチには無害とされてきた種類の農薬だった。いわゆるBT剤という分類の農薬。葉っぱを食べるイモムシ類(ハマキ虫)だけをターゲットにする薬だ。

ということで、できるだけ科学的、客観的に考えれば、農薬犯人説はほぼ成り立たない。もしあるとすれば、それは何十軒もある農家のうちの誰かが別の農薬をつかったことを隠しているかもしれない、という話になる。まさか、そんなことはふつうの農家ならやるはずがない。果樹の授粉を助けてくれるハチを殺して損するのは農家自身だからだ。

そういう状況なわけだが、にもかかわらず養蜂業者側は納得しなかったようだ。どうも信頼感がなくなってしまった。来年度以降の見通しはもちろん立っていない。被害を受けた巣箱1群あたりの補償金3万円。4群で12万。

農薬問題とはべつに、色んな原因でミツバチ自体の数量確保がだんだんむずかしくなっている。オーストラリアからの輸入が伝染病問題でストップした去年までの女王蜂不足よりも、今年はさらに足りないような話も聞こえている。ハチの取引価格も高騰しているらしい。しかも、養蜂業は職業分類上は「畜産」として農水省が所管している。ミツバチは家畜なのだ。農家という点で、他の農業とおなじような悩みを抱えている。たとえば後継者問題、輸入品(ハチミツ)との競争関係があること、など。将来性にもきびしいものがある。


もともと果樹農家は花の時期=ミツバチ導入時期には殺虫剤をいっさい散布しなかった。しかし20年くらい前からだったか、殺虫剤の研究がすすんで特定の種類の虫だけをたたく薬がつぎつぎ開発されるようになった。まず脱皮阻害剤(IGR)と分類される系統、生物農薬(BT剤)と呼ばれる系統だ。こういう殺虫剤はミツバチなどには殺虫効果がないとされて、農家はふつうに使うようになった。これまでも、この種の殺虫剤でハチが死んだという話は聞いたことがない。

一方、最近のミツバチ大量死騒ぎで悪役とされているのがネオニコチノイド系という殺虫剤。これは21世紀になってから世界的に広く使われるようになった。

つづきはあとで。

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