ミツバチ、スズメバチ、赤トンボ、農薬?

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ミツバチの大量死については、前にもこのブログに書いたが、ちょっと思い出したことがあるので追加しておく。

以下は2006年の初冬、贈答用に出荷するリンゴの箱に入れたチラシの文章だ。ちょっと長くなるが引用する。

この季節は全国あちこちでツキノワグマが騒ぎを起こしていました。当地でも、近くの山の斜面にある広いりんご団地に出没、1頭がワナにかかりました。そのあとも別の1,2頭がまだ出てきているそうです。おちおち収穫も出来ないなあ。我が家はそこには畑をもっていないので安心ですが(笑)。  けっきょく米沢市周辺で30?40頭もの熊が捕獲されました。
それから、ヒヨドリがこの秋は異常に多かったことも、果樹農家には困ったことでした。洋梨もりんごも突つきまくります。あのピーヨ、ピーヨ、pi?ッ、の鳴き声のにくたらしいことといったらありません。
ちょっと気が付いたことは、今年の秋は、赤とんぼが少なかったような感じです。どうしてかなあ。例年、10月の天気のいい日は空一面につがいの赤とんぼが見られるのですが、今年はそれが少なかった気がします。(引用終わり)

この年はクマ騒ぎがあって、台風やら異常気象で山にクマのエサがないのが原因とか、いろんな説が流れていた。地球温暖化・異常気象というアタマがあるせいか、自然界の現象をぜんぶ異常気象のせいにしてしまう雰囲気もあったと思う。

この引用の最後の部分、赤トンボがいない、と書いたところだ。これを書いたときは、それが農薬とからむ可能性があるなどとは想像していなかった。ところが、きのう以下のような文を目にした。

赤トンボなぜ減少(2008年10月・朝日新聞)

我が家で2006年に感じたことを、そのあと全国でも感じた人が少なくなかったわけだ。
それと、昨今のミツバチの大量死で養蜂家などが名指しで批判している、水田のカメムシ防除薬。

このふたつが結びつく可能性がある。と思えてきた。

と ころが、秋に山から降りてくるアキアカネは夏のあいだは農薬散布に出会うことはほとんどないはずだ。ヤゴから羽化して山に移動するまでのあいだなら農薬に 影響されることはあり得る。しかしこれも、ほかのナツアカネやノシメトンボも同じような影響を受けるはずで、こっちのほうは特に減ったという印象がないこ ととつじつまが合わない。山へ避暑に行かないで平地にいるほうが減ってないのだから、農薬の影響はふつう考えられないのではないか。

朝日新聞で言っている「赤トンボ」とはどの種類の赤トンボを指すのか、それが問題だ。
赤とんぼ(Wikipedia)

当 地で夏から初秋に多く見られるノシメトンボ。これは、果樹畑にもいっぱいいる。夏場はとうぜん果樹の農薬散布で死ぬのもいる。済まんのー、と思いながら早 朝の農薬散布をするのだが、運が悪かったと思ってあきらめてくれ。まあ水田地帯とちがって果樹園はわりあい面積も狭いし、点在していることが多いので、農 薬が原因の「赤トンボの大量死」は起こらないだろう。

10月に目立ってくるアキアカネ。このころは、もちろん農薬散布なんかはしない。このアキアカネは紅玉を収穫するころ、つまり10月の半ば以降にリンゴ畑の空をよく飛んでいる。真っ赤な紅玉を仲間だと勘違いするのか、収穫したリンゴがはいったコンテナにやたらと飛び込んでくる。このアキアカネが、どうも少なくなったような気がするのだ。一体なぜ?

もうひとつ、ちょっとばかり気になるのがスズメバチだ。
これについては、9 月末から10月上旬、熟したリンゴをキイロスズメバチが食べる。キイロスズメバチを当地ではカメバチと呼ぶ。りんごの品種としてこの季節に熟す「つがる」 「千秋」がよく食べられる。食べると言っても、キズや割れ、鳥がつついた跡のある実を食べるので、実害はない。

昔はつがるをよく食ってい たが、今ではつがるは完熟する前に収穫して売ってしまう時代に変わったので、スズメバチはつがるを食べなくなった。その代わり、そのあとから熟期に入る千秋を食べるよ うになった。時期も9月ではなく10月に移った。しかし、時期がずれたせいか何か理由は分からないが、キイロスズメバチの姿も昔より減った感じはする。

スズメバチ類が激減したという見方もあるので、いちおう紹介しておく。
日本蜜蜂の科学 『北信流養蜂術』(「2008年9月26日)
なお、ここにでているニセアカシアについては以下を参照。ニセアカシアそのものはリンゴ農家にとってあまり歓迎されない植物だ。タンソ病は恐ろしいよ。
ニセアカシア樹におけるリンゴ炭そ病菌(農水省)

以上はわたしのたんなる想像、印象にもとづく感想だ。もちろん科学的な調査をしたわけでもないし、トンボの数を毎日毎年、数えているわけでもない。ただ、ちょっと注意して様子を見るのが必要かなとは思う。


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今年の赤とんぼについて書いておくと、

この夏、ナツアカネはいっぱい飛んでいた。9月下旬現在も飛んでいる。
アキアカネはいつもより早く山から降りてきた(8月29日)。たぶん夏が短かったせいだろう。まだアキアカネは大群というほどにはなっていない。ナツアカネの方が圧倒的に多い。

農薬が原因でトンボその他の昆虫が少なくなった、というような主張をインターネット上でもときおり見かける。
昆虫の種類と数量の経年変化を記録した具体的データに基づいた話は見られない。
仮に少なくなったのが事実としてもその原因を客観的に検証した話は見られない。

人間の「印象」「感じ」というのは、相当いい加減なもので、当てにならないことを忘れない方が良い。

この話の続きは、2010年10月31日の当ブログ記事。
「アカトンボの減少について」

イネの育苗時に使う殺虫剤の影響とする研究がでている。

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