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くだもの畑とお仕事の最近のブログ記事

桜桃:

冷えた夜が明けた日、午後になって、かなりひどい凍霜害が起きているらしいという噂を聞いた。まさかと思って、急いで畑から桜桃のつぼみをあちこち取ってきた。この時期の桜桃は、つぼみがかなり膨らんでいたがまだ開花していない。

紅秀峰のつぼみを割ってみたところが下の写真。真ん中左が健全な雌しべ。その右側3個は枯死した雌しべ。寒波の日4月12日の午後撮影。

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それから10日ほど経った畑の姿。

左端:ナポレオン、中・右端:佐藤錦 (4月22、23日撮影)

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上の写真は花びらが散ったあとではなく、初めから花びらが縮れて無くなっていた奇形花。もちろん、雌しべはほとんど枯死していて、雄しべも多くが死んでいる。ふつうの年なら満開で真っ白い花がびっしり咲いているころ。


リンゴ:

寒さに弱いサクランボのつぼみはもちろん、わりあい強いはずのリンゴのつぼみも、やられてしまった。開花期になってもつぼみのまま咲かない。咲いた花も中をよく見るとめしべが枯れて黒くなっている。花びらはあってもめしべもおしべもない。主力のふじは4割の花が枯死、王林にいたっては9割枯死、北斗も半分以上が枯死という、信じられない壊滅状態になった。

王林:花は咲いているが雌しべがないか黒く枯れている。雄しべも縮れてしまっている。(4月23日撮影)
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黒いのが枯れた雌しべ。黄色いのはまだ生きている雄しべ。
DSCN1731.JPGふじ、北斗その他:咲く花の数が全体に少ない。咲いた花も中心花の死んでいて、咲いている花は側花が多い。ふつう、健全な花は真ん中にいちばん大きい中心花があってその周りに4つほどの側花がついている(上の王林の写真参照)。

つぼみそのものが枯死していて咲かないものもある。とくに地上2メートルくらいの高さまで、つぼみのまま大きくならず花がまったく咲かないものが多かった。
(4月26日撮影)

ちらほら花の咲き始めたリンゴ畑で、ただ呆然とするばかりだった。咲く花が少ない。たとえ咲いた花もめしべがなければリンゴが実るはずもない。

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DSCN1661.JPG2016年4月11日から12日朝にかけて米沢地方はとつぜんの寒波に襲われた。
上の写真は12日朝、桃の枝にたたずむ2羽のスズメ。開花も遠くない桃のつぼみは、かすかにピンクの花びらをのぞかせている。

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DSCN1658.JPG11日の日中に降り出した雪は夜になると積もり始めた。翌朝までに10センチ近い雪が積もった。

4月の半ばと言えば、あと10日もすれば桜も桜桃も花が咲き始めるころだ。とりわけ今年は暖冬少雪だったため、果樹の発芽もいつもより1週間から10日も早まっていた。

桜桃(サクランボ)のつぼみもかなり膨らんできたころだった。そこにこの寒波だ。

花の時期に雪が積もることは、ときどきある。だから雪が降ること自体はそんなに大騒ぎすることでもない。問題は気温だった。下のグラフは気象庁の米沢観測点データから作成した。

kion.pngこの日、夜10時過ぎには氷点下になった。わが家のある米沢の果樹地帯は気象観測所がある地点よりもずっと山側にある。だから、じっさいの気温もこのデータより低い。氷点下になったまま日付を超えて翌朝8時ころまで、ずっとマイナスの冷凍庫に入っていた。最低気温は未明の4時ころ、マイナス4度以下にまで下がった。

ふつう、この4月というのは毎年のこと、霜に注意が必要になる。サクランボの花はとくに寒さに弱い。花と言うよりも開花前のつぼみの状態のときが一番弱い。霜のばあいは早朝の5時、6時ころの1,2時間の間だけ、氷点下になる。しかもマイナス1,2度がふつうだ。それさえ乗り切れば大丈夫だ。

ところが、今回はぜんぜん違っていた。およそ8時間もの長い間、果樹はすっぽりと凍結状態におかれていた。それもマイナス2度以下が長時間つづいた。

この季節のこんな冷え方は、米沢でもほとんど例のないこと。そして、サクランボだけでなくリンゴにも、深刻な、経験したことのない被害がおきていたのだった。(つづく)




高温と少雨

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前回の記事「凍害」に書いた去年12月の低温と対比するように、今年の5月は異常な高温で経過した。

こういう両極端が起きてくるというのは、農家にとっては非常に困る。温暖化の脅威は年々、急速に増大している。脱原発とか言って火力発電ばんばん燃やしているどこかの国の国民はあほだな。

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4月下旬から6月にかけて高温と少雨。バタバタしているうちにもう7月になってしまった。。

この前の冬の雪害は一つ前の記事に書いたとおり。今回はリンゴと桃の凍害について記録しておく。
以下の写真は5月始めの撮影。


DSCN1110.JPG上写真:桃の幼木。完全に枯れた。4年生、品種さくら。去年まで健全に生育していた。

DSCN1111.JPG上写真:りんご紅玉の幼木。これも去年まで何の問題もなかったが、とつぜん完全に枯れた。6年生。

DSCN1061.JPG発芽しなくなった枝の部分は赤褐色に焼けたようになっていて、皮を削ってみると形成層まで赤黒く死んだ状態になっている。

初めは枝フラン病を疑ったが、フラン病とは明らかにちがう。フラン病は皮が軟らかくなるが、今回のは硬く乾いた状態だった。洋梨類ではよく見る胴枯れ病ではないかという見方もあった。たしかに洋梨の胴枯れ、枝枯れ症状に何となく似ていた。



DSCN1066.JPG枯死した枝は切りとった。もし胴枯れ病だとすると厄介なことになる。いままでリンゴの胴枯れ病は一度も経験したことがない。何の前兆もなしに春先にとつぜん枝や幼木が枯死されたらたまらない。樹がなくなってしまう。対策はあるのか。





そこで、元・農業試験場につとめていたOBの先生に園地で診てもらった。結果は「病気ではなさそう。凍害ではないか」ということだった。去年の12月、ま だ果樹が落葉していない時期に低温があった。前の雪害の記事でも書いたが、枝折れも凍害も、樹体がまだ冬眠体勢に入る前に突然寒波に襲われた。そのことが 被害に大きさにつながったらしい。こういう枝枯れは毎年少しはあるが、今年ほどひどいことはいまだかつてなかった。あっても枝先が枯れる程度で、太めの枝や幼木全体が枯れるようなことは今年が初めてだった。

米沢2014年12月の気温変化と平年の気温。気象庁のデータからグラフを作成してみた。

細めの折れ線が去年実績、太めの線が平年値。平年より相当に低かったことがわかる。氷点下10度くらいは真冬の1月から2月にかけてなら普通にあるが、去年のように12月の始めから何度も起きることはない。こういう極端な気象現象は地球温暖化と無関係ではないのではないか。

kion201412.png桃はどちらかと言えば暖地の果樹だから、寒さに弱いのはわかる。桃の凍寒害は近年、山形でも話題になってきた。しかし、リンゴについては暖地の果樹ではないし、凍害もいままで聞いたことはなかった。それが今年のように出てくるのは、やはり異常だろう。

以下の写真。枯死はしなかったが、凍害のダメージを受けた枝は発芽と展葉が弱く、衰弱した状態になった。健全な枝は緑の葉っぱが広がって、白い花も咲きそろっているのと比べてもらいたい。これらの枝には果実はつけられないので、すべて摘花して、枝の負担を軽くしてやった。今年の回復をめざす。

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いちおう雪害の「前編」というタイトルにしておいた。

雪が完全に解けてからでないと被害の全体像は確定しない。とくに、野ネズミだ。この冬は12月の初めからドット降った雪がそのまま根雪になったので、畑の雪に覆われている期間がいつもより長くなりそうだ。こういう年は野ネズミが雪の下で大騒ぎしやすい。同じように積雪期の長かった2006年は根っこをかじられる被害が多発した。

今年は2月になって積雪深が2メートルを超えた。最大時で2メートル20くらいだった。27日現在で1メートル60くらいまで大きく減った。

以下の写真はりんごの主な枝折れ被害だが、これらはみんな12月上旬のドカ雪にやられたものだ。まだ葉っぱがいっぱい付いている状態のところに湿った重たい雪が積もったために、太い枝がバリバリと折れた。葉っぱの落ちた後の真冬なら、多少のドカ雪でもこんな被害は起きない。

ふじの枝折れ被害。4番目の樹は幹に弱い部分があったために真っ二つに裂けてしまったが、他の樹はふつうなら折れないような部分が折れた。
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以下は紅玉。
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北斗

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hokuto1.jpg今年も「北斗 りんご」を検索してわが家のウェブにやってきた人が500人近くなった。去年の秋も急にアクセスが増えたのだが、今年は去年以上に多かった。時期は北斗が収穫期になる10月末から11月にかけてがピークだった。

品種を名指して調べる人がいるのはリンゴの一品種としては異例だろう。ただし、わが家に来るということは、世の中で北斗について書いてあるウェブの絶対数が少ないことを意味している。それだけ、これまで世間で話題にされることが少なかったマイナーなリンゴなのだ。

北斗は客観的に言えば、糖度はさほど高くない。ところが食べた人の印象はまるで違う。果汁が多くてジューシー。水分が多いので甘さがすぐに口の中に広がる。だから数字上の糖度よりも食感としての糖度が高い。

熟すと蜜が入る。だから食べる人の目からも美味しさが倍加するわけだ。蜜の入っていない北斗は味も素っ気もないが、これは糖度自体が高くないせいでそうなる。つまり美味しさの大部分は果汁(水分)が多いことでもたらされている。

hokuto4.jpghokuto6.jpgそれから、果実が大きい。お客さんもそのボリューム感に圧倒される。大きいもので800グラムくらい、平均的な大きさで500グラム。これはフジなどと比べると倍ほどの大きさだ。

ただ、大きくてジューシーなのはいいが、それはとりもなおさず日持ちが悪いことを意味する。軟化してしまって美味しさが長続きしない。

しかし、何よりもこのリンゴの特徴をひと言で言えば、歩留まりの悪いリンゴ、農家にしてみれば最悪の品種、ということになるだろう。

歩留まりを悪くしている大きな原因は軸割れ(ツル割れとも言う)の多さだ。それから芯カビ病の多発。これも外からは判別しづらいので、消費者の信用を失いかねない、致命的な、この品種の欠陥と言える。芯カビ病は、芯の部分が黒い空洞になって、そこに白い蜘蛛の巣のようなカビみたいなものが生えている。お客さんの印象はなんだこれ、となる。そこから腐っている場合もある。

それから色づきの悪さ。品質のバラツキの大きさ。外見、色が同じ品種と思えないくらいちがった実が成る。さらに呆れるのは、一本の北斗の樹で太枝ごとに成る果実の姿が変わることだ。この枝の実はみんな色が赤くつくがこちらの枝は全部色が悪い、あちらの枝は蜜が入りやすいがこっちはダメ、といった具合。

hokuto5.jpgそれにしても、この北斗は登場してからもう30年の歴史がある。そして、農家はとっくに見捨てたリンゴなのだ。それが最近、急に注目されてきたのはどうしてなのかなあ。よく分からない。






プルーン

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パープルアイ、8月15日撮影。あと半月ぐらいしたら収穫開始です。

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佐藤錦も色づいてきた。写真は枝の先端部なので赤くなるのは早い。樹全体としてはまだまだだ。

今年は全体に結果量が多い。つまり成りすぎ。そのままだと大きくならないので摘果をしたが、それでもまだ多め。

天気の方は、梅雨入りが早かっただけでなく、今年は梅雨に入るやいなや雨と曇天がつづいている。梅雨の前半はカラ梅雨になるのが山形のふつうのすがた。そもそも、6月に雨が少ないからこそ山形はサクランボの産地になったわけで、雨が多ければサクランボの生産に適した産地にならなかった。天気が今悪いのは困ったものだ。収穫前の1、2週間くらいは雨は要らない。

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防鳥ネットで包まれたサクランボ雨除けハウス。
今日の佐藤錦DSCN0135.JPG
DSCN0088.JPGサクランボは実止まりがハッキリしてきた。写真は右上が佐藤錦、下が紅秀峰(クリックで拡大)。紅秀峰はいつも成りすぎになる品種なので、これも摘果して実の数を減らす作業が必要。

今年は開花が早かったのでいつもよりやや早めの収穫になるかも知れない。6月の天候次第だが。

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2024年2月

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