果樹栽培についての用語解説
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スピード・スプレイヤー
農薬散布用機械です。薬液タンク容量最大1,000リットル。車体の後部に放射状に憤口が配列されていて上方と左右に霧状の薬液を噴出します。後ろから見えるのは送風ファンです。我が家ではりんごの場合、一回の散布で合計3,500〜4,500リットルをかけます。サクランボは1,000リットル弱です。車体価格はン百万円。
「農薬使用に関する当果樹園の基本的見解」・・(まだ書いていません)

マメコバチ
果樹の花粉交配用に飼っている蜂の一種です。とてもよく働くうえ、巣箱(写真右)の管理も簡単なのでこの蜂を自家用に飼っている農家が増えています。体長1センチ程度で、ミツバチと違って針はなく、また女王蜂もいません。集団活動はせずそれぞれ雌蜂が単独行動をします。巣はヨシの茎を切ったもので、蜂はこの筒に幼虫の餌となる花粉を集めて卵を産みます。筒の奥から順番に花粉の詰まった数個の産室を作り、産室と産室のあいだは土でふさいでいきます。親蜂は開花期に巣筒から出てきて春だけ活動し、仕事が終わると死んでしまいます。幼虫は花粉を食べて育ちそのままサナギになった状態で越冬して、春暖かくなると入り口の土壁を破って出てきます。

摘花(花摘み)

(左=摘花前、右=摘花後)
リンゴの花は中心に一つ、その周りに普通四つの花が取り巻いて咲きます。中心の花が最初に咲く一番大きい花で、これを残して周りの花は摘み取ります。これを摘花または花摘みと呼んで、開花後まずしなければならない大事な作業です。これによって養分の無駄な消耗を防ぎ、残した花の充実を図ります。この花摘み作業は6月半ばのサクランボ収穫期前までつづきますが、花は花びらが散って数日後には、もう小さな小さな果実の赤ちゃんになります。花摘み作業はその急速な成長と競争するようにして摘花から摘果へと移行していきます。果実の細胞分裂が最も盛んな時期にこの作業をひととおり終わらせることが、良い果実を収穫するための重要なポイントです。

摘蕾(芽かき)

(左=摘蕾前、右=摘蕾後)
桜桃(サクランボ)は一つの花芽から3〜4個の花が咲きます。こうした花芽が4〜10個くらい集まって一つのクラスターを形作っています(写真左)。したがってクラスター一つ当たり合計20〜30もの花が咲くわけです。これらの花がすべて実になるわけではなく、ふつうクラスター当たり5〜7個くらいが結実します。しかし、これくらいの数の実が成った場合、一つ一つの実はあまり大きくなれません。「成り過ぎ」で養分が行き渡らないからです。これを避けるため、蕾の段階から蕾の数(つまり花の数)を減らしてやります(写真右)。この作業を「摘蕾」または「芽かき」と呼びます。摘蕾はだいたいクラスターあたり3〜4個程度の花芽を残すようにします。これによって開く花の数は自然状態のおよそ3分の1から2分の1くらいに減ることになり、その分、残った花が充実して果実も大きく作ることが出来ます。作業は2月から4月初めまでが適期で、枝の剪定作業と並行して行います。

サクランボ用雨よけハウス
収穫期に雨が強く降るとサクランボの実は急に水分を吸って破裂してしまいます。実割れです。これを防ぐため樹をハウスで覆います。写真の園地は幅8メートル、長さ22メートルのハウスが6棟建ててあります。梁の高さ4.5メートル、棟の高さ6.0メートル。我が家の場合、ハウスの総延長は350メートルほどあって、この上をポリフィルムで覆う作業が6月上旬に決行されます。もっと規模の大きい農家は総延長が1キロメートルにもなるので、多くの雇用労働力を必要とします。我が家では、これをひとりで実行しているので非常に疲れます。高所の作業であるのと短時間に被覆を完了しなくてはならないので、危険と隣り合わせの時です。このとき同時にハウス側面に防鳥網もかけます。こうしてサクランボは、収穫の終わる7月上旬いっぱいまで雨傘をさした状態となります。

わい化栽培リンゴの樹はふつう放っておくと5メートルにも6メートルにもなります。樹をなんとか小さく低く作って作業がしやすいように出来ないか、というところから「わい化栽培」が始まりました。リンゴは葉っぱや実が付いている地上部分と根っこの部分が別の種類で出来ています。この根っこの部分を台木といいます。地上に見える部分を穂木と言って、穂木の性質で「ふじ」や「つがる」といった品種が決まってきます。一方、台木は樹の性質を決める役割をもっています。ある種の台木は樹をあまり大きくしない性質を持っていて、こうした台木を使って「わい化栽培」が本格的に行われるようになりました。栽植密度は普通栽培が20本/10a程度(間隔7〜8m)なのに対し、わい化栽培は70〜100本/10aという密植で樹と樹の間隔は2mx5m程度。したがって仕立て方も大きく異なります。普通栽培では、心の枝を取り払って日当たりをよくした開心形仕立てがポピュラーで、3ないし4本の骨組みとなる主枝をつくりそこに小さい成り枝を付けていきます。わい化栽培は、主幹をまっすぐ立ててそれを中心に側枝と呼ぶ成り枝をたくさん作っていく、杉の木状の形に仕立てていきます。
・普通栽培樹の典型的な樹形開心形
・わい化栽培樹の典型的な樹形主幹形

葉摘み・玉返し

(左=葉摘み前、右=葉摘み後)
リンゴが赤くなるのは、果皮にアントシアニンという色素が作られるからです。これは、糖度が上がってきた果実に光が当たることによって作られます。日当たりの良い果実ほど色がつきやすくなります。もし葉っぱが果実にかぶさっていると光が遮られてその部分にアントシアニンが作られません。そこで果実に光がよく当たるようじゃまな葉っぱをむしり取る作業が必要になります。葉摘みの時期は果実が色づき始めた頃です。しかし葉は果実を美味しく熟させるために無くてはならないものです。したがって見かけだけ考えて必要以上の葉っぱを取りすぎると味は落ちてしまいます。
玉返しというのは、果実をくるっと回して反対側にも光が当たるようにする作業で、葉摘みの後しばらくしてから行います。このように、リンゴを赤くするには細かい手作業が欠かせません。

葉取らずリンゴ

蜜入り
「蜜入り」というと美味しいりんごの代名詞にもなっています。どんな品種でも蜜が入るのではなく、ふじ、北斗、スターキング、紅玉、昂林などに限られます。一昔前は「注射針で実に蜜を入れるんですか?」とかいう人もいました。笑い話です。ところが、なんと、蜜入りは病気とされていた時代があったのです。昭和6年発行の『リンゴの研究』という権威ある書物には「蜜病」という項目があってその「予防法」として「良法は発見されていない。・・・・」とまじめに記述されています。たしかに蜜入りというのは甘い蜜が入った状態ではなく、ソルビトールという物質が果糖に変換されないまま果実の中に異常にたまった状態のことです。当然蜜入りの蜜は*甘くありません*。夢がないなあ。つまり正常な生理状態ではないというわけです。ソルビトールにいわば水浸しになっているため、長期間置くとその部分が腐敗する場合もあります。このため青森のように翌年まで貯蔵してフジりんごを販売する地方では、長期販売用に向けるため蜜が入る前の完熟していない果実を収穫するようにしています。

反射シート
太陽の光がないとリンゴは赤くなりません。少ない光でも色づくように、アルミ蒸着のシートを地面に敷いて反射光で色づきをより良くします。はっきり言ってこれは邪道です。インチキです。しかし日本の消費者一般は、真っ赤に色づいたリンゴとあまり色の良くないリンゴがあれば赤い方を選びますよね。太陽の直接の光だけで赤くなった果実と反射シートの力を借りた果実とでは当然味に差があります。ほんらい赤くならないような日当たりの悪い場所になっているリンゴが美味しいわけありません。それを色だけ赤くしようというのですから・・・。果実は赤くなるにしても、果実の味を作り出しているのはその周囲の葉っぱです。葉っぱに光が当たりつづけることで果実にでんぷんや糖分が蓄積されるのです。葉っぱは上から来る光を受け止めるように出来ているので、反射してくる光は葉っぱにとってほとんど役に立ちません。
我が家の場合、サクランボについては反射シートをいっさい使わない方針をとっています。リンゴについては日がどんどん短くなる秋に着色するので、とくに晩生種のふじでは反射シートを積極的に使います。

アレロパシー

予冷・追熟

根ぐるみ・ナイロン巻き
冬のあいだ畑に積もった雪の下では、腹を空かした野ネズミが樹の皮をかじります。皮をぐるりとかじり取られた樹は、春になっても水分や養分が流れなくなりいっぺんに衰弱します。苗木や幼木は枯れてしまいます。そこで予防策として雪が積もる前に根元を肥料の空き袋で包んでおきます。誰が考え出したアイデアか不明ですが、当地の果樹農家はこの方法で果樹を守っています。こうすると被害をかなり防ぐことが出来ますが、根際の土の下の部分をかじられることもあるので、防御は完璧ではありません。また、山に近い園地では野ウサギも果樹の皮や芽を好んで食べます。これは雪の上から来るので、苗木や幼木のばあい刈ってきたカヤを使って周りをすっぽり包んでおきます。

フラン病
果樹を枯らしてしまう恐ろしい伝染病です。雨に溶け込んだフラン病の胞子が樹の傷口や剪定した切り口などにつくと感染します。発病すると皮が腐ってきて、発病した部分から先の枝はたちまち枯れます。太い枝や幹で発病するとどんどん広がって枝や幹を一周し、1、2年で樹そのものが枯れていきます。発病した部分を放置しておくとそこから胞子が作られて感染を広げます。見つけ次第なるべく早く枝は切り取り、幹は感染した部分を削り取らねばなりません。治療の特効薬は無いので、一度発病すると被害は非常に大きくなります。写真は皮を削り取って切り口を守る予防薬を塗りつけたところです。これでも菌が周りにちょっとでも残っていた場合は再発します。
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