雨と桜桃 6月19日

2008年版No.5
戻る

雨が降らずカラカラだ。今日、夕方から少し降っているが、あまり量は期待できない。 サクランボにとって大雨は困るが、全然降らないのもうまくない。 雨除けハウスも、今年は雨除けのためというより鳥よけのためにある、と言っていいだろう。雨が降らないからといってかけないわけにはいかない。ムクドリ、スズメ、カラスに全部食われるだけだ。

20年も前までは佐藤錦に雨除けをかけるなんて一般的でなかった。

そうなのだ。思い出してくれ。晩生種のナポレオンは、強い雨が降りやすい梅雨の後期(7月)に収穫期をむかえるので、どうしても実割れを防ぐ必要があった。しかし、佐藤錦は6月中にたいてい収穫を終えることができたから、農家も雨除けをそんなには気にしていなかったのだ。多少実割れするが、そういうものだと思っていた。雨除け施設は建設経費がかかるし、昔の雨除けテントは鉄骨製の開閉式で、施設そのものの危険度も高かった。だから、佐藤錦はあえてかけるものではない、というのが普通だった。

しかし、いちばん糖度の高い、大きい実から割れていくので、今の基準で合理的に考えればひどく損なことをしていた。割れた佐藤錦も地元では自家用として買って帰る人が少なくなかった。うまいから売れたのだ。われわれ農家は収穫しながら、樹に登ってそういう割れた実を自由に、ゲップが出るほど食べていた。今は割れなくなって、そういう農家の特権は消えてなくなってしまった。いい製品を食べるわけにいかないからだ。

時代はなんと大きく変わったのだろう。 今の佐藤錦の作り方は、あまり数多く実を成らせないでひとつひとつの実を大きく作って高く売る、そういうスタイルに完全に移行した。もちろん雨除けハウス施設が改良されて使いやすく手頃になったことも大きい。雨で割れる恐れも少なくなったので、そういう作り方が出来るのだ。

さて、あさってから本格的に収穫を始めるぞ。

▲もくじ