最近、ある方からメールを頂いた。我が家のホームページをたまたまご覧になって、このサイトの内容に共感してくださったようだ。まったく名前も何も私の知らない方だった。「お客様用通信欄」から送信されたメッセージ・メールの中に、某有名農産物直売組織から「高い」野菜を購入していると付け加えてあった。その組織は有機農業とか安全な食べ物とかをうたっているはずで、わたしも若いころから名前だけは知っている。
そこで、どんな値段で売っているのか、その某団体のホームページを検索してのぞいてみることにした。一番身近なリンゴはどうなっているのだろうか?と。。。。そこには「ふじ」リンゴが1キロ824円、と表示してあった。うひゃーっ、正気か! びっくりした。こんな非常識な値段設定を、よくもまあ、いけしゃあしゃあとしているものだ、まるで”高級果物店”だな、と思った。ふつうの産直価格の2倍近くにもなる。たしかに能書きだけはたいそう立派なことが並べてあった。しかし異常だ。こんな高価な農産物でもそれを買っているお客さんが沢山いるからこういう組織も成り立っているのだろうが、そういうお客さんが可哀想だ。まるでカルト宗教団体にお布施として自分の財産を捧げているような、そういう「信心深い人々」を想像してしまった。これは露骨に言って、生産者がこういう価格を設定しているならその理由が聞きたいし、販売組織が設定しているなら”中間搾取”としか言えない。
間違ってもらっては困るが、農業はきれい事ではない。善良な農家のオヤジや元気な若者が青空の下で丹誠込めて作った農作物、農薬を使わないで有機栽培した自然の豊かな恵み、そういう美しいニッポンの田園風景みたいな、幻想をふりまくのはやめた方が良い。
作物を病気や害虫から守るには殺菌剤と殺虫剤、殺ダニ剤を的確に使わねばならない。無農薬でリンゴを作ろうとすれば、右の写真のような状況を覚悟せねばならない(クリックで拡大)。これは昨年9月8日撮影のふじリンゴ成木で、近くの兼業農家が栽培していた木だが、この年、農薬をほとんど散布しなかったためにこうなった。写真のとおり、9月初めの段階で葉っぱがみんな落ちてしまっている。斑点落葉病と褐斑病にまともにやられた結果だ。7月ごろまでは葉っぱが未だあったが、ハダニも付いて赤茶けた色になっていた。
9月上旬といえば緑に覆われた姿でなければならない。それが、こんな風に果実だけになってしまうと、11月に収穫するはずのふじリンゴはもはや赤くならないし味も付かない。リンゴの無農薬栽培で安全安心などと言ったって、まずいりんごは誰も買わないよ。しかも、夏の終わりに葉っぱを失ったリンゴの木は、翌春大きくきれいな花を咲かせるための芽(花芽)に養分が貯められないから、ダメージは次の年まで及んでいく。この兼業農家の人は今年の春先この樹を倒してリンゴ栽培をやめた。