2005年版No.8
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7月25日、果樹農家の猿害対策協議会が発足した。 会員数78戸。リンゴや西洋梨、桜桃を栽培している農家だ。農協と市当局の支援を受けてのスタートだ。

今年はもう近くまで猿の群が迫っている。40頭ほどの軍団が山から降りてきてトウキビ(トウモロコシ)やカボチャを食い荒らしている。彼らが手を付けないのはナンバン(唐辛子)だけだそうな。人間が食べる野菜という野菜、果物という果物は何でもいただく。それはそうだろう、猿も人間も親戚同士だからね。食べ物は共通している。いちど食べたものは味を覚えて忘れない。何が美味いものかは猿もよく知っている。だから、毎年、その畑にやってくるようになる。

すぐ目の前に猿がいても、猿のほうは一向に人間をバカにして恐れない。だいたい普通の人は猿とケンカをしたって勝てるものではない。まして何十頭もで向かってこられたのでは背筋が寒くなるだろう。 で、これはもう鉄砲隊にお願いするしかなくなるというわけだ。 電話で猟友会のメンバーを呼び出す。たいてい農家の若い衆で狩猟免許を持っている者が何人もいるので、彼らの出動になる。ところが、猿はどのツラの人間が鉄砲撃ちか、ちゃーんと知っている。だから、その姿を見るか見ないかのうちにサッサと山の中へとトンづらだ。

問題は空を飛ぶ鳥を狙うのとちがって、猿に対しては”水平撃ち”をしなければならない。これは大変なことなのだ。水平撃ちをするということは、万が一、を心配しなければならなくなる。猿でないものを撃ってしまったらエライことになるのだ。流れ弾だって危ない。積雪のある季節なら山の樹は多くが葉っぱを落としているから、猿とかウサギとか熊とかカモシカとかいった動物の動きはよく見える。夏は逆だ。うっそうと茂る木の葉が見通しを悪くする。そんな中での鉄砲撃ちはそれなりの危険がふくれあがる。だから、猟友会の鉄砲撃ち仲間でも無雪期の猿撃ちはいやがる。そのうえ、猿は何と言っても人間の親戚だ。いかに憎たらしい奴らでも、撃ち殺すとなるといい気持ちはしないのだそうだ。

そんなわけで、鉄砲撃ちの効果のほどはあまり期待できない、という話になっていく。猿に限らず鳥(カラス)に対しても鉄砲の効果はほんの一時しのぎに終わることが多い。それよりももっと大事な問題がある。鉄砲撃ちはほんとうは人間のほうを恐れている。要するに、鉄砲を撃つことに対する”一般住民”の苦情がいちばん恐ろしい。昔とちがって今ではどこもかしこも宅地化がすすんでいる。しかもその多くが農家ではない!! つまり農作物への被害に理解が薄い。鉄砲を撃つ必要はまったく他人事にすぎない。加えて道路も畑の中、山の中、どこにでも通っている。法律上も規制にしばられて里山での鉄砲撃ちはきびしい環境にある。

とにかく、猿問題はややこしいことが多い。これからどうなることやら。

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