5月の10〜16日は「愛鳥週間」だ。果樹農家は日常的に野鳥とつき合っているから、改めてなんとか週間といったふうに設定してもらわなくてもいいくらいではある。しかし、確かにこの季節は畑で仕事をしていると、天気のいい日は一日中いろんな鳥がにぎやかにさえずりかわしていて、仕事をしていても気持ちが良いものだ。とにかく野菜や米農家とちがって樹を育てて暮らしているので、私たちにとっての仕事場は鳥にとっても生活の場そのものだ。夏や秋には豊かに実った果実はごちそうになるし、そこに棲む昆虫も鳥にとっては無くてはならない食べ物だ。それから繁殖期には巣をかける場所にもなる。スズメ、ムクドリ、時にはフクロウが樹に空いた穴や洞を巣にする。キジバトは西洋梨など枝が繁茂しやすい太い枝の上に巣を作る。
この他、キジ、カワラヒワ、モズ、コゲラといったところが年間を通してごくふつうに見かける鳥たちだ。これに季節ごとにカッコウやツグミ、シジュウカラなどが加わる。
ところで、愛鳥週間と言われても、果樹農家にしてみればどうしても憎たらしい鳥の方が目に付く。カラスやスズメはもちろん、ムクドリ、ヒヨドリが4大害鳥かな。とくに一番嫌われているのがヒヨドリだろう。あの鳴き声を聞いただけで、やつけたくなる。季節季節の樹になる果物は何でも食べるし、マメコバチまで食べる。そのうえ効果的な防御方法がないのが、ヒヨドリが最も憎まれる要因だろう。花をめぐっているマメコバチを食べるのはヒヨドリだが、カラスも、油断をしているとマメコバチの巣を襲う。巣箱からヨシの巣筒を引っ張り出して、くちばしで裂いて中に蓄えられた花粉団子と蜂の幼虫を食べるのだ。よほど美味しくて栄養もあるのだろう。
まあ、嫌な鳥もいるにはいるが、このさわやかな季節はやはり野鳥無しでは寂しい。今日もモズが近くの辛夷の木のてっぺんで高らかに鳴いていた。モズはそのうち他の野鳥の鳴き真似を始める。耳を傾けていると今日は、ツバメの土食って虫食って渋ーい、コジュケイのちょっと来い、ちょっと来い、ウグイスのほーけきょ、けきょ(まだ鳴き方の下手なウグイスの真似)、その他ぴーちくぱーちくという種類の分からない鳥の鳴き真似を披露していた。素晴らしいなあ。