ヒデリノトキハナミダヲナガシ 7月10日

2004年版No.7
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猛暑の日々が続いている。6月も平年より暑かったが、7月になってさらにひどくなった。最高気温が34度を超える日がもう3日もあった。夏は暑いのが良いに決まっているが、度を超すとうまくない。最高気温が平年より5度も6度も高い日が連続するのは尋常でない。それだけでなく、雨もろくに降らないから畑はカラカラに干上がって果樹も縮れてしまいそうだ。6月に大きい台風が上陸したのに続いて今月の猛暑。例によって地球規模の天候異変は確実に進んでいるらしい。

ところで、宮沢賢治の『雨ニモマケズ』の一行、「ヒデリノトキハナミダヲナガシ」の「ヒデリ」はじつは本人ではなく、賢治の没後に出版される際、編集者が書き換えたもの、といわれている。「ヒデリ(日照り)」ではなく日雇い仕事を意味する「ヒドリ」と賢治は書いた。たしかに賢治の遺した手帳には「ヒデリ」ではなくはっきりと「ヒドリ」と書き込んである。夏の日照りは東北の農民にとってけっして涙をこぼすほど悲しいことではなく、むしろ米の豊作をもたらす喜ばしい気象だった。ヤマセの吹く曇り空こそ米に凶作をもたらした。「サムサノナツハオロオロアルキ」。そういう意味からも、この原文とはまったく違う詩文が定着してしまったのは、いかにも不思議なことだった。もっとも「ヒドリ」とすると意味がよく分からなくなるので、賢治自身の書き間違え、と後の人が解釈したのも無理はないのだが・・

参考:『宮澤賢治の詩の世界』 雨ニモマケズ詩碑

農作物一般に言えるのは、生長期の適度な雨と成熟期の乾燥、がもっとも望ましい天候のパターンだ。とくに果実や果菜、米などの穀類はおしなべて熟期の降雨を必要としない。雨は実の充実をさまたげたり病気を広げたりする。果実は乾燥気候によって糖度が上がる。サクランボは6月の乾燥を求める。山形がこの産地になっているの理由の一つがこれだ。去年のように夏場の天候が不順で冷夏気味だったときは、夏の果物がすべて美味しくなかった。ブドウも桃も糖度が低く病気も多発した。

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