スズメ、スズメバチ再考 1月25日

2003年版No.5
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八ヶ岳の麓に住んでいる俳優の柳生博さんがラジオで言っていたが、去年初めてスズメを見たそうだ。それまでそこの地方にスズメは棲息していなかった。野鳥の会の人の解釈は、温暖化で標高の高い地域でもスズメが生きていけるようになったこと、それと街の住宅が巣を作りづらい構造になったこと、ということだった。やっぱりなあと思う。柳生さんは鳥が種類が増えてうれしいような話しぶりだったが、まあそれはご愛敬。鹿が増えているようなことも語っておられた。野生生物の種類や数が変わるのは、それだけ環境が激変している証拠なので、あまり笑って済まされる話ではない。山形県では近年、カモシカが人を襲う事件が起きるようにもなっている。

それで思い出したのだが、去年ここのページでスズメバチについて書いた。そのときインターネットの検索で分かったことには、その1年前にもまったく同じ事件が別の大学ワンダーフォーゲル部で起きていたのだ。自分たちの山小屋を持っている大学ワンゲル部の数は限られている。しかもホームページを開いているワンゲルはさらに少ない。にもかかわらず、1年の差はあるものの同じスズメバチの巣事件がまったく別の山で起きた。これが単なる偶然と言えるだろうか。20年、30年という山小屋の歴史で毎年のように巣が作られていたというのなら気にもならない。しかし、そうではないのだ。

植物は気候の変化に敏感だ。岩手県にある早池峰山は美しく貴重な高山植物の宝庫として知られる。その山に詳しい人の話でも、高山植物の植生があきらかに変わってきているという。高山の気象条件は厳しい。しかしその厳しい条件に適応した植物がしっかり生きてきた。逆に低地の植物は適応できなくて高山に繁殖しない。温暖化はこの関係を狂わせる。高山植物にとって「厳しくない」気候は耐えられない。北海道からはこんな報告もある。大雪自然ジャーナル

動物は植物に比べれば気候変化にある程度まで対応できる。しかしそれも程度問題で、ここ数年つづいて起きているモンゴルの寒波による家畜大量死や、アフガンの干ばつによる人間の飢え、北朝鮮の食糧危機などは地球規模の大問題を感じさせる。温暖化と寒波は相反するように見えるが、温暖化が地球大気の流れを異常なものにしていると解釈すれば、極端な気象現象が起きることと矛盾しない。スズメもスズメバチも空を飛べる動物だから、気候が変化すると自分にあった気候条件の場所を求めて移動できる。今までいなかった動物を見かけるようになるのは単純に喜ぶべき事ではない。そう言えば、横浜のタマちゃん、てのもあったけど・・・。あれだって、そんな楽しい話題なのかどうか私は疑問に思う。昔いた動物が自然破壊で少なくなって、また環境が良くなって戻ってきた、という話ではないのだから。そう考えると、日本中、世界中、あちこちで自然が警告を発していると思えてくる。警報ランプが点滅だ。これが本当の「大量破壊兵器」じゃないかなあ。

補足:『スズメバチの逆襲』中村雅雄著(新日本新書)という本があります。スズメバチの実態がよく解説されています。

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