予想どおりの超安値で始まった。早生品種「つがる」は関東の青果卸売市場で例年の半分以下の値段が付いた。今年度第一回めの出荷でこれだから、この先さらに安くなることを考えると今後の採算割れは避けがたい情勢かも知れない。わが家の入っている組合は弱小組合だから、農薬事件による買い控えムードという逆風下では、市場でも先ず真っ先に切り捨てられる運命にある。どうしたって農協系統の大組合がどちらかといえば優遇される。だが、もちろん農協系統でも我が組合と比べてさほど高値がついているわけではないから、山形県のリンゴ・洋梨農家すべてにとって歴史始まって以来の深刻な秋に踏み込んでしまったことは間違いなさそうだ。どうなることやら・・・青森県でも違法農薬が使われていたようだから、ほんとうは山形だけの問題ではないのだが。
一般消費者はあまり知らないことと思うが、小売店の売り場に並んでいるリンゴの値段は、青果市場での卸値のだいたい2〜3倍と考えてもらっていい。つまりリンゴの値段のうち半分以上は小売店を含む中間流通業者のふところに入る。農家の手にする残りのうち2〜3割が市場までの輸送費として運送屋に渡るので、実際の手取りは10キロ1箱で1,000から1,500円程度になる。分かりやすいようにリンゴ1個の値段にすると、良くて40円、ふつうは30円程度だ。いつも買い物で値段の動きが分かる立場の奥さん方なら、果物の値段とくにリンゴは値段の上下が少ないことをご存知だろう。あまり安売りはしないのがリンゴだ。しかし、実際の卸値は初め高く最盛期にドンドン安くなり、末期は捨て値になる。つまり、ここが問題なのだが、小売店は仕入れ値が下がってもほとんど同じ値段で店に並べているのだ。差額は丸儲け。いま、山形産のリンゴが卸段階で超安値になっていたとしても、小売店はそれを大安売りなどしていないはずだ。こうしてリンゴ生産農家だけがバカを見るという仕組みがまたしても機能し始める。