続・農業事件簿・無登録農薬の流通発覚

2002年版No.19
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農薬問題について読者の方からこんなメールをいただいた。

ホームページの、農薬について書かれているのを、読ませていただきました。 農作物を、ついつい工業製品と同じように考えてしまう都会育ちの消費者です。

主人の実家が、養鶏をしていたり、米や、野菜を作っていたりで、農家の暮らしが、 少しわかるようになったのと、子供達の未来を考えた時に、少しでも安全な食品を、 環境に、負担をかけない生活をと、考えた時期がありました。 合成洗剤を、石鹸に変えたり、添加物の少ない食品を選んだり、無農薬や、有機栽培 に取り組まれている 農家から直接、野菜やりんごを購入していたこともありました。

けれど、今は、もっと気楽にやっていこうと思っています。 正直なところ、精神的にも、経済的にも、しんどくなってきたからです。 石鹸は、食器を洗うには、どうしても使いづらい。 虫が、ついている野菜は、安全な証拠と思ってみても、気持ち悪い。 省エネと思ってみても、暑いと(関西は、ホント暑いのです。)エアコンを、つけて しまう。 安全だといわれる食品や、環境にいい商品は、高い。(古紙を使ったトイレットペー パーより、 バージンパルプのもののほうが、安いんですものね。) もちろん、スーパーで、あまりにも安い商品(手作りするより安いお菓子、ミネラル ウォーターより安い 牛乳、醤油、油、などなど数え上げればきりがありません。)を、購入する時、 手放しで喜んでいるわけではありません。

今、食に、関してだけを見ても様々な問題が、出ていますが、心有る生産者の方も、 経営と、誇りの、ジレンマに陥っておられるのでしょうか? 昔に、戻ることは、出来ませんし、それが、幸せだとも思いませんが、 もう少し、真面目な人々が、報われる社会になって欲しいと、無力な母は願います。

当地での現況を報告しよう。山形県当局の指導で、JAおきたま農協(県南部一帯を統合する広域農協)が各農家の農薬使用の実態調査と果実サンプルの残留農薬分析を始めることになった。9月4日にいっせいに農地に立ち入って果実の採取が行われる。わが家はいわゆる農協系列の組合ではなくごく小さな任意組合に属している。組合員わずか5軒。生産物は農協を通さずに単独で市場に出荷している。こうした小さい組合の農家もすべてこの調査に参加することになっている。分析費用1万円ほどは各農家持ちが原則で、問題の農薬を使っていない農家としてはこんな出費はしたくないが、産地全体の信用が問われている事態なのでやむを得ないかなあ、という立場でみんな協力している。

農家、農業関係者の本音は「発ガン性といったって一日1個2個食べてもガンになるわけじゃなし、騒ぎすぎだ」ということだ。梨や西瓜を毎日何百個、皮ごと食べる人も世の中広しと言えどそうそうはいないだろう。仮にそういう人がいたとすれば、ガンになる前に食べすぎで病気になるだろう。実質的に言えばそうなのだが、公式に誰かがそういう発言をすれば当然叩かれる。法的に言えば悪いものは悪い。弁明の余地はないからだ。しかし、前にも書いたが、これは多くの場合消費者に害が及ぶのではなく農薬を散布する農家が受ける危険の方が圧倒的に高いのだ。「消費者は身勝手だ」農家の多くはそう心で思っている。消費者と一口に言っても色んな人がいるので難しい。重箱の隅をつつくのを趣味にしているような人も世の中にはいる。

と言うよりも、じっさいは小売店を始めとする流通業者が勝手なのだと思う。大型量販店やデパートなどは、ちょっと世間で騒ぐと自分の身を守ろうとして取引停止にしてしまう。お客の目ばかり気にしているからだ。いつもは農作物の見かけやサイズ、数量、販売時期、価格などなどを自分の都合だけで決めて、それらの条件を青果市場と生産農家に押しつけているのに、こういうときになると手のひらを返して「買わない」と言い出す。こうした小売店の姿勢こそが、農作物を農薬漬けに仕向けている張本人だというのに・・・。

蛇足だが、桃の農薬散布を一回”手抜き”したせいで実の一部に虫が入ってしまった。これだから、困るんだよね。注文分が確保できるかどうか・・・心配になってきた。

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