3D業界がこのごろ話題になっているらしい。
日本経済新聞社説「3Dテレビの世界競争で負けないために」(4月24日)
日経BPnet 『3Dテレビ』
昭和30年代から40年代にかけて子供だった世代なら、なつかしさで涙が出るかもしれない。
学研とか小学館とかの子供向け月刊誌や漫画雑誌には、ときどき、あの赤セロハンと青セロハンが貼ってある色眼鏡の付録がついてきたものだった。立体めがねとか立体写真とか呼んでいた、当時の子供なら誰でも知っていたあれだ。だから、こういう話題がまじめくさった報道として出てくるのは、可笑しい。と言うより、侘びしいと言った方がいいか。天下の日経新聞さんも。
遙か昔、テレビが居間にどんと鎮座していて、その前にみんなで座って画面を見た、遠い時代。それはテレビが登場したてのころの短い期間だけのことだった。すぐにテレビはごろごろ寝ころんで見る家具になった。それからテレビは、ただ電源は入っているが誰も見ていない、ただの飾り物になっっていった。その画面ではだらだらと面白くもないバラエティ番組がながれていた。
これからの時代は、3Dテレビの前にみんな正座して、あのへんちくりんな色眼鏡をかけて、そして3D番組を鑑賞するのだそうだ。寝ころんでみたら、お母さんに叱られるヨ。
こんな子供だましでもって家電製品を消費者に買わせる。そういう子供だましでしか経済成長はできないというなら、そうするしかない。子供だましが世の中を制するのか、しょせん子供だましは子供だましに過ぎないのか。栄光の日本経済も、エコポイントとか地上デジタルとか子供だましがすべての時代になった。
何年か前にも書いたことがあるが、3D映像をふくむCG(コンピュータグラフィックス)技術が映画をダメにしてきた。CGを多用した映画は最低だ。CGを使った映画はみんな同じに見える。映像の個性がまったくない。アクション映画もファンタジー映画もスペクタクル映画も、画面と人物から個性が消えていく。映画の自殺行為なのだが、批判する声はあまり聞かない。
CG 映画は「リアルな特撮映像」を売りにしている。しかし、リアルはリアルでも、クソがつくリアリズムだろう。テクノロジーでもって本物らしく見せることがリアルなことではないことぐらい、まっとうな感性を持った映画人なら分かるはずだ。テクノロジー映像が主役の映画に未来はない。