昔、霞ヶ関や大手町、丸の内界隈を仕事場にしてうろついていたころ、 それは、第二次オイルショックの後のことだった。電力業界の親玉がこう言った。 「省エネというのはエネルギーの節約のことじゃあない。エネルギーの有効利用のことだよ」
そーなんだー。省エネは節約することじゃないんだ。
昨今、省エネ家電製品とか省エネ自動車とか、買うと政府が補助金を出すという、うまい話が宣伝されている。エコポイントとかいう「特典」もあるらしい。
そうだ。省エネ家電製品をいっぱい買って、家中、省エネ家電製品だらけにして、電気をいっぱい使おう。どんどんエネルギーを使おう。そういう大宣伝が展開されている。省エネとはエネルギーの有効「利用」の促進なのだ。有効に、どんどん使おう。省エネはエネルギーを減らすことじゃないのだから、エネルギー消費を増やすことは良いことなのだ。省エネとは消エネ。エネルギー消費を増やすことだ!!!。
たとえば、扇風機を使っていた家庭が省エネタイプのエアコンを買ったとする。省エネだというのに電力消費は増える。エアコンは省エネタイプだろうと何だろうと扇風機よりもエネルギーを浪費する。扇風機をやめてエアコンを買えというわけだ。これがニッポンの「省エネ」政策の本質だ。省エネの錯覚。節約しているような気分になるだけで、実際はエネルギー消費を増やそうとしているだけ。ようするに悪質な偽装詐欺だ。
たしかに、こんなに省エネ・タイプの電器製品ばかり売っているというのに、日本の家庭の電力消費量は減らなかった。もし減っていたら、電力会社は売上げが減って困るだろう。着実に増えているから困らない。1970年代のオイルショック以来、省エネ!省エネ!と叫んできたニッポン。なのに、エネルギー消費はぜーんぜん、減りはしなかった。電力消費量でいうとなんと2倍に増えた。誰も「節約」なんかしなかった。誰も「もったいない」なんて実行しなかった。
参考:日本の電力消費推移:電力消費推移(オレンジ色)をクリック。
有効利用に意味がある、価値がある、のではないことはサルでも分かる。有効か非効率かは経済問題だ。そうではなくて、いま問題になっているのは環境、資源だろう。そのためには、エネルギー消費の絶対量を減らすことに意味があり、価値があるのだ。しかし、ニッポンの政府はそんなことは考えない。電器産業と自動車産業と電力産業がもうかるようなことが大切なのだ。
省エネ家電に買い替えるとか、ハイブリッド車を買うとか、そういうことをしていればエコになる、地球環境がよくなる、温暖化対策が進む、とか思うのはとんでもない誤解だ。エコな気分、環境がよくなるような気分、温暖化防止になるような気分、がするだけ。「気分」だけ。気分だけではなんにも変わらないのだよ。たちのわるいエコ偽装だ。風呂に浸かっていい気分でエネルギー消費節約、なんかできはしない。エコカーでハイウェイをきもちよく走ってエネルギー節約、なんかできはしない。
というようなことで、これが「エコ」を売りにするニッポン国だ。「省エネ」先進国ニッポンだ。 そう言えば、高速料金を1000円にしたとかいうのも、すばらしいエコ政策だったね。環境にやさしい麻生くん。ガソリン大量消費万歳。エコドライブ万歳。民主党もこの点は同じ穴のムジナだ。まさしくエコ偽装、省エネ偽装の天国。