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美しい論理 汚い仕事 〜 朝日新聞に見る差別意識 ・・・ [2009/3/26]

このことは、今回の小沢一郎事件を見る上で、たぶん誰も言っていないことと思う。だから書いておく。

ニッポン人のかなりの人たちが、土建屋つまりゼネコンは汚い職種だ、と心の底で考えているということだ。泥をいじっているから汚く、そこで動くカネもきたない、と。そしてそういう汚い職種の汚い献金をもとに活動している政治家もまた汚い、と。そして、これがまさに東京地検特捜部の、法の拡大解釈をつみあげた「美しい論理」「高潔な起訴理由」に直結する。大久保秘書の起訴のうしろに見えかくれする、正義を自称する検察官僚たちの傲慢さ、無意識の人間蔑視。

まずテレビも新聞社も「きれいな職種」だ。医者とか弁護士とか評論家とかいった高学歴な人がなる職業も「きれい」だろう。ソニーとかパナソニックとかキャノンとかトヨタとかホンダとかのハイテク機械製造業も「きれいな職種」だ。「きれいな」職業はいっぱいあるだろう。インターネット関連やコンピュータ関連企業とか、サントリーとか航空会社もそうだろう。なんとか銀行、なんとか証券もそうだろう。学生の就職先希望の人気投票でもみればよくわかるだろう。

むかし国鉄関連の新聞にかかわったことがあるが、そのとき聞いた話にこういうのがあった。駅のホームで品のよさげな母子二人づれが話をしていた。「○○ちゃん、勉強していい大学に入ってね。ちゃんと勉強しないと、あんな人になるのよ」と言って、母親は子供に、線路のわきで保線作業をしている男たちを指さした。

田中角栄に始まって小沢一郎に至るまで、マスコミが国民にうえつけてきたゼネコン政治家、土建屋政治家のイメージ。カネだけで動く金権政治家のイメージ。それは、かなり多くの国民そのものが、自分は「きれいな」仕事をしていて、あいつらは「汚い」仕事をしているやつだという、差別意識のうえに成り立っている。自分はお金にきれいな高級人種で、あいつらはカネに貪欲な低級人種だという、優越意識のうえに成り立っている。汚いやつは叩き殺してもかまわない、プータローは殴り殺せ、中学生だってそう言うニッポンだ。しかし、カネにさもしいやつほど他人のカネをねたむものだ。

ほんとうに「汚い」のは誰か。いつも善良ヅラをしてきれい事を言っている者がいちばん汚い。

25日の朝日新聞を見て、あまりのハレンチさにあきれた。これぞファッショの共犯者。 リンチが公然となされる「暗黒社会」の旗振り役。さすが、朝日だ。昭和の戦争でも「国策」にしっかり貢献した輝かしい経歴をもっている。同じ朝日は22日に社としての事件報道の指針を公表していた。読んでみると白々しい言葉が並べてある。

朝日新聞の新しい指針「情報の出所を明示/容疑者・被告と捜査側言い分対等に」(2009年3月22日)
日本新聞協会「裁判員制度開始にあたっての取材・報道指針」(2008年1月16日)

民主党の党員でもないのに、新聞やテレビ、それから「識者」とかも「小沢は代表を辞めろ」と主張をするのが目につく。小沢は犯罪人ではない。党首を辞めろという権利はその党の党員にしかない。こんなあたりまえのことすら分からないお馬鹿というべきだ。もし仮に、小沢に辞めろと言うなら、それとセットでだれを民主党党首に(次期総理大臣に?)すべきかもハッキリ主張しなければ、無責任というものだろう。なぜ、だれが良いと言わないのか。なぜ、だれに代われと言わないのか。お馬鹿は無責任だから言わないだろう。「中立公正」を装っていたいからね。「善良」な顔をしていたいからね。こういうやつを古来、人は卑怯者と呼んできた。

もちろん朝日だけの話ではない。これは、読売やNHKやあらゆるマスメディアに共通する。

「国益」について書こうと思っていたら先を越された。
田中良昭 『これじゃオバマは生まれない』