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オバマとアメリカの世紀  ・・・[2008/11/5]

オバマが次期大統領になった。

ブッシュの8年間がもたらしたイラク・アフガン戦争での国際的覇権の失墜、それに今回の金融破綻がオバマへの追い風になったという。たしかにバカ殿の8年間ではあった。殿のおかげで何万何十万の名もない人々が殺され、何十万何百万の人々が難民になった。

しかし、今見えてきているアメリカという国の凋落現象は、ブッシュの失政のせいではない。21世紀の初めにブッシュが大統領になったのは、単なる結果だった。アメリカの抱える致死的な病こそがすべての原因にある。あのサル顔サル頭のブッシュでさえ8年間も大統領でいられたという、奇跡的なその事実だけで、それはアメリカという国が救いようもない崩壊の過程にあることを示す動かせない証拠なのだ。人類の歴史でもっとも進んだ国であるはずのアメリカ合衆国があのブッシュを大統領にいただいていた、他国の私たちにとって信じがたい事実こそ、この国の真実をそのまま反映している。

そして、今、オバマが大統領になったとしても、アメリカが死に至る病からぬけだすことを止めることは残念ながらできない。これは歴史の必然というやつなのだ。大統領が替わったぐらいで、この国が違う国に変わるわけがない。なぜならオバマはナポレオンでもないしヒットラーでもないからだ。オバマを過剰評価するニッポン人が異常に多いのは、何とも呆れるばかりだが、なぜ、こんなに単細胞的な受け止め方しかできないのか。小泉劇場が終わったら今度はオバマ劇場の始まり始まり、ということか。ニッポン人の思考停止病はそうとう深刻らしい。

もっと例を挙げながら書かねば説得力がないが、簡単に言ってしまえば、アメリカの世紀は20世紀で終わっている、ということだ。このサイトでもだいぶ前から書いているが、ソ連が崩壊した1990年代に唯一の超大国の衰退は始まった。いわゆる「物質文明」を謳歌し、自由主義の勝利に酔ったアメリカの20世紀は、このとき終わった。空前の財政赤字、イラク・アフガンの泥沼。自動車産業の苦境に典型的に見られるモノ作りの衰退と、産業の金融分野へのシフトにともなって、この21世紀はアメリカ空洞化の世紀となった。

オバマ勝利は、この国が崩壊しつつあることの裏返しなのだ。Change! Yes, You Can. 自由を愛する君らならできる。たしかに。しかしアメリカの「変革」はない。「崩壊」という名の変化があるのみだ。