先日、アメリカ・ワシントンでブッシュ・横田早紀江会談があった。 ブッシュはうまい。「アメリカは日本人を大切に思っているよ、ミセス・サキエ」とかなんとか言ったのかも知れない。
その一方で、アメリカの世界的な戦略再編の中、日米軍事同盟の強化は着々と進む。グアム基地建設に7000億円、日本国内の米軍基地整備に3兆円。日本が金を出しましょうというのだ。北朝鮮をやっつけてくれるブッシュが金を出せと言ってんだから、日本が金を出すのは当然だ、という日本国民の雰囲気をつくるのには絶好のタイミングだった。ミセス・サキエをブッシュ政権とコイズミ・アベ政権はうまい具合に利用した。100パーセント、日本の世論向け演出だね。
ホワイトハウス製作、コイズミ協賛の日本人マインド・コントロール劇場はまたまた大成功だ。すばらしい。
沖縄のアメリカ海兵隊がグアムに移動するというので、その金を日本が負担することで政府間が合意した。なんと費用の半分以上、7000億円をポーーンと気前よく出すのだという。ニッポン人の多くがなんでそんなカネ出す必要あるんだと反発した。そういう反応が世の中に満ちているところで、ブッシュ・横田会談だ。泣けるような演出でしょ?
コイズミ愛国政権の真骨頂だね。コイズミ構造改革というのはすばらしい。日本を半世紀以上占領している軍隊の、戦略的海外移動計画に資金を提供するというのは、アホな政権しかできない。海兵隊が移転すれば沖縄の負担軽減になる、という「おためごかし」はいつもの調子。アメリカのグアム基地建設に金をだすというのは、米軍との結びつきがより深まることであって、日本(沖縄)の軍事的負担が減るという話じゃない。ますます前のめりに、アメリカさんにからめとられていくというわけ。
こういうのを「盗人に追いゼニ」っつうじゃなかったっけ。
ミセス・サキエがブッシュにお願いするというやり方は、北朝鮮の不法に対してアメリカの強大な国家暴力におすがりする、ということでしかない。それは、残念ながら、拉致被害者が叫ぶところの根拠になっている倫理観を自分で捨ててしまうことに他ならない。アメリカ政府にお願いしようとする時点で、被害者は被害者でなくなる、ということも分かっているのだろう。
一つの例でしかないが、グアンタナモ米軍基地での「人権弾圧」が挙げられる。あるいは、国際刑事裁判所制度への参加を拒否するアメリカ政府の姿を見れば、この国が倫理的には北朝鮮と大差はないどころか、古今東西もっとも自己中心的で人権抑圧的な専制国家であることが分かるだろう。ミセスは、ブッシュの対テロ戦争とかいうのも、イラク破壊も、京都議定書拒否も、臨界前核実験も、支持しているのだろう。